噛み合わせ
顎関節症の定義
顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節(雑)音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、関節包、靭帯障害、関節円盤障害、変形性関節症が含まれている。
顎関節症の症状
1 あごが痛む
2 口が大きく開けられない(開口障害)
正常な人は縦に指三本分入る(40~50ミリ)が指が二本程度(30ミリ)もしくはそれ以下。
3 あごを動かすと音が鳴る(関節雑音)
4 噛み合わせに違和感がある
5 口を完全に閉じることができない
その他の症状
頭痛、首や肩、背中の痛み、腰痛、肩こりなどの全身に及ぶ痛み 顎関節部やその周辺の痛み
顎関節症
一種の現代病といってもいいかもわかりません。異常な咬み合せが、顎の関節(耳の2cmほど前)に障害を起こします。
- 口を大きく開けると「コリッ」という音がする
- 耳の辺りがなんとなく思い感じがする
- 口を大きく開けると関節が痛い
- グッと噛みしめると関節が痛い
- 口を大きく開けられない
- 朝起きると口が開かなくなっていたことがある
- 顎がよくはずれそうになる
- 関節が突っ張ったかんじで、口の開閉がスムーズにいかない
- 左右の関節の動きがずれている
色々な症状がありますが、軽い症状でも放置しておくと、ある朝起きたら突然、口が1cmほどしか開かなくなっていたというようなこともよくあります。
慢性的な肩こり、首の痛みはありませんか?
顎関節症と肩こり
噛み合わせが悪くなると、頭部のバランスの崩れを支えるために僧帽筋などの筋肉に負担がかかり、常に緊張した状態になります。それが肩こりにつながるのです。噛み合わせによっては頚椎(けいつい)がずれてしまう場合もます。
さまざまな不定愁訴の中でも、特に肩こりはわずかな顎のずれによって症状がでてしまう病気です。ですが、その分比較的容易に症状を改善・消失させることができます。
何が正常か?
正確な検査により、異常な咬み合せがあるかどうかを確認する。
異常な咬み合せがなければ、歯科医院で治療できる顎関節症ではありません。
異常を考える前に、正常な咬み合せとはどういうものか?を考えてみます。下に示した3つの原則を満たしていることが正常な咬み合せといえます。
筒井塾顎模型より
下顎の上端(関節頭といいます)と上顎の骨のくぼみの間には、関節円盤という軟骨があります。この関節円盤はいろいろな方向に、種々の筋肉で固 定されていますが、関節の動きとともに下顎頭に連動して移動します。咬み合せの異常や外傷などにより障害が起こると、関節円盤を固定している筋肉に緊張が 起こり、関節円盤が関節頭の動きとうまく連動できなくなります。そして、関節円盤がいわゆる「つっかえる」状態となり、痛みや口が開きにくいという症状が でるのです。
1.診断
顎関節症であるかどうか、噛み合わせに異常があるかどうかを触診やレントゲンなどによって検査します。検査の結果顎関節症であれば、治療の方針などを判断します。
2.位置の決定
治療の方針に従い、治療計画を立てます。具体的な治療法としては、咬合器(顎運動や咬合のさまざまな位置を再現する装置)を使用し、顎の正しい位置を決定します。
治療
顎周囲の筋肉が原因であれば、適切な顎関節の位置に咬み合わせを誘導していくように咬合調整をしていきます。その後、歯軋りなどの癖がある方には、スプリントを夜間のみ装着していただきます。
顎関節、関節円盤自体が原因の場合には、まず関節円盤の位置を確定させるためにスプリントをできるだけ長く装着していただき、その位置が決まった時点で咬 合調整を行います。この場合の治療期間は症状によって大きく異なります。数ヶ月で終わることもあれば、1年以上かかる方もいらっしゃいます。
顎関節症のタイプ
- 筋肉の障害によって起こるタイプ(Ⅰ型)
- 関節包、靭帯の障害によって起こるタイプ(Ⅱ型)
- 関節円盤の障害によって起こるタイプ(Ⅲ型)
- 変形性関節症によって起こるタイプ(Ⅳ型)
筋肉の障害によって起こるタイプⅠ型
咀嚼筋(側頭筋、咬筋、外側翼突筋、内側翼突筋)の障害によるもの。頰やこめかみのあたりが痛む。
筋肉の緊張や筋炎が原因。
頭部、首、肩など離れたところに関節痛が起こる。
関節包、靭帯の障害によって起こるタイプⅡ型
顎関節の関節包や靭帯などの繊維組織に力が加わって捻挫を起こしたようになり痛みを生じる。あごを動かすと顎関節部が痛む。雑音がする。
関節包:骨膜のつづきで関節腔を完全に包む。滑膜の内面からぬるぬるとした糸をひくような滑液が分泌され、摩擦を軽減する。
靭帯:骨と骨、筋肉と骨をつないでいる丈夫な繊維性の組織
関節円盤の障害によって起こるタイプⅢ型
円盤の形態、位置の異常と顎運動時の動態協調性などの異常のほか、円盤の組織の異常、関節雑音がはっきり聞こえるけれど筋痛はなく、痛みは弱いのが特徴。
Ⅲ型−A
関節円盤の復位(もとの位に戻る)を伴う転位。関節雑音が主体。
口の開け閉めで関節円盤がずれて音がなる。
Ⅲ型−B
関節円盤の復位を伴わない転位。
開口障害が主体。
口を開け閉めしてもひっかかりが戻らない為に口が開かない。
変形性関節症よって起こるタイプⅣ型
関節軟骨の破壊下顎窩や下顎頭の骨吸収や変性・添加、関節円盤や滑膜の変形異常などによるもの。重度の症状。レントゲン写真にも異常が現れる。
Ⅳ型とⅢ型とは何らかの関係があると考えられています。
円盤障害では多くの場合、顎運動の円滑性欠くことになるので、下顎頭軟骨層に器械的刺激を与える環境をつくると思われます。
このことから、Ⅲ型とⅣ型は経過が進むにつれて合併または相互に移行することがあります。
顎関節症の治療法
1 運動療法
開口や顎を動かす訓練をして口がよく開くようにする。
2 薬物療法
痛みが強い場合に薬で炎症を鎮めたり、筋肉が痛みで固まっている場合に筋弛緩剤を用いたりする。
3 スプリント療法
スプリントを装着することで顎関節や筋肉への負担を軽くして歯軋りや食いしばりの害を緩和する。
4 咬合再建
スプリント治療を行った後に噛み合わせを調整する。
5 外科療法
症状の改善されない場合は外科療法が行われる場合がある。
関節内に強い炎症がある場合に針をさして関節内部の物質を洗い流す
「関節腔内洗浄療法」
関節内で関節円盤と骨の癒着がある場合にそれをはがす
「関節鏡視下手術」
などがある。
手術の必要な方は0.5%くらいの割合です。
患者さんの症例
主訴
あごが痛くて肩こりもひどい カクカク音が鳴る。
分類
Ⅰ型+Ⅲ型−A
治療
スプリント装着の後、咬合調整 上顎仮歯に変える
初診時 | ||
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治療中 | ||
今、症状はまだあるが、初診時よりもだいぶ楽になっています。
今後、下顎前歯部の矯正を検討中
顎関節チェック方
☐食べ物をかんだり、長い間しゃべったりすると、あごがだるく疲れる
☐あごを動かすと痛みがあり、口を開閉すると、特に痛みを感ずる
☐耳の前やこめかみ、頬(ほお)に痛みを感ずる
☐大きなあくびや、りんごの丸かじりができない
☐時々、あごが引っかかったようになり、動かなくなることがある
☐人差し指、中指、薬指の3本の指を縦にそろえて、口に入れることができない
☐口を開閉したとき、耳の前の辺りで音がする
☐最近、あごや頭(けい)部(=首)、頭などを打ったことがある
☐最近、かみ合わせが変わったと感じる
☐頭痛や肩こりがする
いくつか該当する項目があった人は顎関節症の可能性がある。
顎関節の発症に関係する生活習慣チェック
☐「歯ぎしりをしている」と言われたことがある
☐ 日中、気がつくと歯をくいしばっていることがある
☐ 食事のときは、いつも左右のどちらか決まったほうでかむ
☐ いつもうつ伏せで寝ている
☐ 頬杖(ほおづえ)をつく癖がある
☐ 職場や家庭で、ストレスを感じることが多い
☐ 物事に対して神経質な面がある
☐夜、ぐっすり眠れないことが多い
該当する項目が多いほど、顎関節症を発症しやすい。
側頭筋
側頭筋は幅広で帆立貝の形をしています。側頭筋は側頭部(耳の前、上、後)をカバーしています。頭痛または顎関節の具合がおかしい時は、いつでも検査および治療の対象です。
付着
起始:側頭窩の骨と筋膜
停止:下顎の筋突起と下顎枝の前縁
作用
顎を閉じる
顎を後方及び外側に動かす
側頭部と下顎骨をつなぐ
関連痛領域
側頭部、眉の部分、頬、切歯および臼歯の全部または一部
咬筋
咬筋は最も重要な咀嚼筋であす。顎関節に異常がある場合は最初に症状が出やすいです。
付着
起始:上顎骨頬骨突起と頬骨弓
停止:浅層筋は下顎の外側面(下顎角と下顎枝下半分)深層筋は下顎枝上半分に付着(付着部が下顎角まで広がっている場合もある)
作用
側頭筋や翼突筋と一緒に下顎をあげる
関連痛領域
上下顎、顔側面、耳、眉上
耳鳴りの原因にもなりえる
翼突筋
翼突筋は顎の筋肉です。その名称の示すように、翼状に広がっている放射状筋で、さまざまな筋肉からなっています。それらの様々な部分が、顎の動 きや顎関節の安定に寄与しています。外側翼突筋のごく一部は口外から触れることができるが、内側翼突筋はできません。顎、顔面や耳の痛みは往々にして翼突 筋に起因しています。翼突筋はまた顎関節症の重要な要因でもあります。
顎二腹筋
舌骨に付く筋郡の1つが顎二腹筋です。